前回からのつづき。
「柱・梁や床といった本体の作られ方=工法」を切り口に戸建て住宅を眺めてきました。
まず、構造・工法は、作りたい家を実現するために選択されるべきであって、
それが優先されてもうまくいかないという話でした。
そして統計で確認すると世の中で建設される住宅の多くが木造戸建て住宅でした。
そこには技術の蓄積と継続性があります。
そして手始めに木造の代表的な構造・工法である在来工法と2×4工法を見てみました。
話を続けましょう。
③ 木造ラーメン工法
最近になって戸建て住宅にも使われるようになった工法です。
鉄骨造の柱と梁を、木材に置き換えたようなもので、木製の太い柱と太い梁でジャングルジムのように構成します。
通常の木造軸組構法がやや繊細なのに対し、柱や梁に厚みがあるため強固さというか、力強さがあります。
壁の量や柱の本数が少なくて済むので大空間や大開口が可能になります。
しかし、木造ラーメン用の構造材の製造・加工には大きなサイズの加工設備が必要です。
そのため比較的コストは高くなります。
④ 木質パネル工法
その名の通り、床・壁・天井を木質のパネルで構成する工法です。
バリエーションがたくさんあり、ハウスメーカーごとの独自工法となっています。
何れにしてもパネルを工場で生産し、
現場での加工を最少にして組立てるだけ、とするため工期短縮が可能です。
しかし、作業効率が優先されているため
どうしても住宅設備やプランニングの自由度が低くなります。
また独自性が強いことがリフォームや住宅設備の更新の障害になることもあるようです。
⑤ 木造軸組パネル工法(ハイブリッド工法)
木造軸組構法と2×4工法を組み合わせた工法です。
軸組を組んだ後に外からパネルを張るので、断熱性が高いのが特徴です。
こちらもハウスメーカーそれぞれの独自工法なので性能だけでなく価格もまちまちです。
続いて木質以外の住宅用の工法ですが、鉄やコンクリートを使った工法があります。
⑥ 鉄筋コンクリート造
戸建て住宅でも用いられますが、
集合住宅や商業施設など規模の大きな建物に用いられることが多い構造です。
鉄筋(鉄の棒)を網目に組んで板で囲いをつくり、そこにコンクリートを流し込んで柱・梁・壁・床をつくります。
配筋工事 → 型枠工事→コンクリート打設(流し込み)→養生(固まり強度が出始めるを待つ)→型枠外し
と、手間が多く、時間もかかるのでコストは木造などに比べると高価になります。
しかし耐震性、耐久性の高い材料ですので、長年住むのに適しています。
また、コンクリートは密度が高く重いので、音が伝わりづらいという性質があります。
その上、大きな空間の確保が可能です。
事前に検討しておけば、リフォームや設備機器の更新もしやすい建物にできますし、
結露、カビ、シミなどの発生にも対応できます。
⑦ 鉄骨造
鉄骨造には二種類あります。
鉄骨の厚さが6mm未満の鉄骨を使った軽量鉄骨造と、6mm以上を使ったものを重量鉄骨造です。
軽量鉄骨造は、アパートや小規模店舗に用いられることが多いです。
プレファブ工法とも呼ばれることもあります。
法定耐用年数は19〜27年に設定されています。
ハウスメーカーで採用されていることが多く、
規格化されているので、設計の自由度はその規格の中だけとなります。
重量鉄骨造は大規模マンション、ビルなどで用いられることが多いですが、
ハウスメーカーの独自工法が多い軽量鉄骨造と違い、重量鉄骨造は一般の工務店でも扱えます。
基本は木造軸組工法と同じ考え方ですが、
鉄は木より強度が高いため
柱、梁が細くなり、かつ
柱・梁の少ない大空間や大開口が可能となります。
そのため、設計自由度が高い工法といえますが、木材より加工や現場作業が大変ですので、コスト的には割高となります。
また鉄骨造の中にも面で支えるパネル工法や軸組とパネル工法の併用工法など様々バリエーションがあります。
鉄は材料として熱を通しやすいため、
冬は熱が逃げやすく結露しやすい。
夏は暑い!
が一方で、構造材としてみたときに
自然素材でバラツキのある木材より安定した材料でコントロールがしやすいです。
⑧ ユニット構造
すでにたくさんの工法・構造が出てきているのでこんがらがりそうですが、ユニット構造は木質系とスチール系のどちらにもある構造です。
各社によって程度の違いはありますが
現場作業の軽減するため
内外装のパネルや設備機器を組み込んだユニットを、工場で高精度で生産します。
それをトラックで現場に運び込み、クレーンで積み木のように組み立てます。
工場のラインのように作業が進みますから現場の進捗の様子は早回し映像のようにどんどんと進んでいきます。
⑨ SRC造(鉄筋鉄骨コンクリート造)
あまり馴染みのない工法だと思いますが、念のためにご紹介。
コンクリートの中に鉄筋以外に鉄骨が入った工法です。
高層の大規模マンションなどで採用される工法で、
コストが高く、戸建てにはあまり関係ありません。
建築のコスト
建物の施工費=値段は、階数や規模、工法や材料のグレードの組合せで決まります。
木造系は一般的に他の工法に比べて安価です。
それでも都市型狭小の3階建になると、防火の規制や面積が小さいことによりコストアップとなります。
他にも本格和風住宅になったりすると法外な値段の建材が存在します。
面積だけではなく、作り方の手間や現場に材料を運び込む手間でコストが大きく違ってきます。
ハウスメーカーなどの規格住宅の場合は、敷地の形や面積、場所によっては建てられないこともあります。
鉄筋コンクリート造は、全体としてはコスト高ですが、階数が増えても防火規制があっても坪単価にあまり影響はありません。
鉄骨造は、鉄骨の原材料相場があり、価格調整が大変であったり。
無数にある工法・構造から何を選ぶのかは
性能や工期、コスト、プランニング対応など
様々な検討要素があります。
構造・工法も家づくりのプロセスの中で決めていくしかありません。
2021/05/05 佐藤 勤 記
この項了
次回、5月7日(金)に更新予定です。
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